「どうせいつかは、みんな死にますからね。どんなふうにこの世とさよならするかは、自分の意思で決めたいと思っています」

 女優の秋野暢子さんは、60歳を迎えた2年前、一般財団法人『日本尊厳死協会』の会員になっている。

延命措置をやめた30分後に母親が他界

「病気や事故で自分がまったく意識がない状態になったとき、人工呼吸器をつけたり胃ろうをしたり、いろんな形で延命することはできます」

 胃ろうとは、胃に穴をあけ、栄養を直接入れる医療措置。口からの食事が難しくなった人が行う。

「でも、私は管につながれ、自分で栄養をとれなくなった状態で生きているのは嫌。だから、“延命治療はしないで”という意思表示をしました」

幼稚園の卒園式。秋野さんと母親

 進化し続ける現代医療では、回復の見込みのない患者を生かし続けることも可能だ。しかし1度、延命措置を始めたら、やめることは容易ではない。

「私の知り合いはお父様が危篤になり、延命をするとどういうことになるか想像する前に、とにかくあわてて延命して10年です。その間に認知症を発症し、会いに行ってもわからない状態だと聞きます」

 もちろん、考え方は人それぞれだと秋野さん。

「ただ、本人が意思表示できない状態であれば、それを決めるのは家族。もし家族間で意見が合わないと、非常に悩みます。“どんな形でも生きていてほしい”と願う人もいれば、“それはかわいそうだからやめてほしい”と思う人も。だから、きちんと意思表示しておいたほうがいいと私は思うんです」

 日本尊厳死協会では、“平穏死”“自然死”を望む人が、自分の意思を元気なうちに記しておくことで、“リビングウイル”という書状を発行している。いわば、いのちの遺言状だ。小泉純一郎元総理や脚本家・倉本聰さんも会員だという。秋野さんが入会を決めたのには理由があった。

私の母は60歳のとき、日本尊厳死協会の会員になっています。当時、それを聞かされた私は20歳。まったくピンとこなくて、“ふーん”という感じでしたけどね(笑)」

 そして、今から23年前。腎臓が悪かった母親の入院中に、秋野さんは仕事で海外へ。帰国して電話をしたときは元気だったが、その後、病院に向かうと、危篤状態になっていた。

「お医者さんは“このまま何もしなかったら1時間で亡くなります”と。30分くらい悩んで。でも最終的には本人の意思を尊重し、“延命措置はしないでください”と伝えました。それから約30分で、本当に母は亡くなったんです」