埼玉4区の前衆院議員・豊田真由子氏(43)が男性秘書に「このハゲーっ!」などと暴言を吐き、暴行を加えたことを週刊新潮が6月に報じ、世間を震撼させて迎えた10月の選挙戦。

 自民党を離党して無所属で立候補した豊田氏は大方の予想どおり候補者5人中、最下位の落選に終わった。それでも2万1614票(前回は8万8730票)獲得したから驚いた。暴行事件は書類送検され、刑事処分は確定していない。この先、政界引退するのか再挑戦か。

 後援者の70代男性は、「投開票日の2~3日後、真由子氏から“お世話になりました”と電話をもらいました。言い訳はせず、落選の事実をしっかり受け止めていましたね。今後、政界復帰を真剣に考えるというのであれば話は聞くつもり」と話す。

 選挙区の個人事務所は閉めていなかったが、人の気配はなし。千葉県の実家を訪ね、豊田氏の父親にも聞いた。

「僕にはわからんよ。政治家になるときだって決めてから報告に来ただけ。40歳を越えているんだし、彼女の選ぶ道だから、ああしろ、こうしろと言うつもりはない」

 元学習塾講師の豊田父は慎重に言葉を選んだ。余計なことをしゃべって娘に迷惑をかけたくないのだろう。しかし、選挙に出なければよかったですね……と振ると、

「僕は出ると思っていた。あれだけ集中的に叩かれたら、大の男だってくたばるぜ。でも、立候補から逃げていたら生涯くたばっていたかもしれない。当然落ちるだろうと思ったけれど、僕はひそかに、立候補したのだけはいいじゃないかと思ったよ」

 と、きっぱり言い切った。

落選後、娘にかけた言葉

 約1時間半の取材を終えた翌朝、記者の携帯電話を鳴らしたのは豊田父だった。全く心配していないように思われたら娘が悲しむのではないか、と気になったらしい。自宅に呼び出されて便せん7枚のメモを渡された。

 その中に、歌人・窪田空穂の短歌が書いてあった。

豊田氏の実父が書いた心境を表す短歌

《今にして 知りて悲しむ

父母が われにしましし

その片おもひ》

 歌の解釈が添えられていた。

《子は親が死んで相当の時間が経過した後、ふと自分に懸けてくれた親の思いに気付くのです。自らの経験や書物から得た知識(真実)等を通して、そのように私は観念しています》

 要するに、本心では真由子氏のことが心配でたまらないのだろう。その証拠に、政治資金の公私混同疑惑でマスコミに叩かれまくって都知事を辞任した舛添要一氏の話を振ると、娘の姿とダブるのか擁護するような発言が目立った。

 真由子氏は落選後の11月、子どもを連れて帰省し2泊したという。豊田父はまず「ああ、つらかったね」と声をかけ、帰り際には「君の人生は道半ばだ。今度はイギリスにでも留学して、政治学なり国際関係論なりを研究してきてはどうだろう。……しかし、家庭があるからなあ」などと言って送り出したという。

「ここまで疲れ切った娘を見たのは初めて。しかし、かけえた言葉はそれくらいだった」(豊田父)

 真由子氏に対しても、言葉が足りなかったと感じたのか、12月初めにノーベル賞作家カズオ・イシグロ氏の『日の名残り』(土屋正雄訳、早川書房)を郵送したという。

「よい読書をし、深い思索をして、気力を取り戻してほしいと願っている」

 同作は、堅物の英国人執事が主人公。米国人に仕えることになりアメリカン・ジョークに困惑する姿などをユーモラスに描くイシグロ氏の代表作のひとつ。はたして真由子氏の琴線に触れただろうか。